フォルクフーグスコーラ とは? - 制度・背景・特徴

マルメー城塞そばの風車

フォルクフーグスコーラとは──制度・背景・特徴

北欧諸国には、高校や大学、大学院とは異なる教育機関が存在します。それが成人教育学校、フォルクフーグスコーラ(またはデンマーク語でフォルケホイスコーレ、英語訳:folk high school)です。

日本では同様の学校は存在しないのでピンと来ないかもしれませんが、民族高等学校、国民大学、国民高等学校などと呼ばれます。

このフォルクフーグスコーラは、成人(スウェーデンでは18歳以上)であればどんな人でも入学することができ、さらには授業料は無償試験や成績がないという一見変わったシステムで学ぶことができるのです。

夢のようなこの学校は、スウェーデンの人だけでなく世界中から入学を受け入れているので、もちろん日本に住む私たちも通うことができます。

本記事では、このフォルクフーグスコーラについての基本情報や歴史、特徴についてくわしく解説していきます。後半では、筆者がフォルクフーグスコーラ留学を決めた理由も載せているので、参考にしてみてください。

学校のイメージ画像

フォルクフーグスコーラのはじまり

フォルクフーグスコーラは1844年、デンマークの教育者グルントヴィによって始まった北欧式の成人教育学校です。「一般大衆に高等教育を」という理念のもと、試験や成績に縛られず自由に学べる場として誕生しました。

北欧諸国へ広がったこの学校は国によって少しずつシステムが異なるものの、その理念や本質は変わりません。現在スウェーデン全土では約150校が運営されています。

余談ですが、日本で一般的に広まっている”フォルケホイスコーレ”は、この発祥国デンマーク語の発音に準拠していますが、スウェーデン語ではフォルクフーグスコーラと発音します。

*当サイトではスウェーデンのフォルクフーグスコーラについて紹介しています。

入学試験も成績もない無償の学校

フォルクフーグスコーラ最大の特徴は、18歳以上の成人であれば入学試験もなく誰でも参加でき、成績による評価がない点です。

高等教育までのやり直しをしたい人はもちろんのこと、手に職をつけたい人、適度な運動をして健康的な生活を維持したい人、余暇を有意義に過ごしたい人などに向けて、柔軟なカリキュラムが組まれていて自由度が高く、仕事を持ちながらでも無理なく学べる環境になっています。

この学校は税金で運営されていて、国籍を問わず学費は無償、授業は基本的にスウェーデン語で行われます。学費は無料ですが、サービス料(学校運営費、教材費等)と生活費(寮費、食費等)は別途かかります。

サービス料は学校やコースによって異なりますが、一般的には年間1,000SEK(約16,000円)程度です。詳しくは以下の記事内で解説しています。

【実体験】入学条件は”18歳以上であること”のみ

私が申し込んだ際もTOEFLやIELTSのスコアや入学試験は不要で、オンラインのインタビューだけで入学することができました。

インタビューと言っても、顔合わせが趣旨の、簡単な英語であいさつや質疑応答をする程度のフランクなものでした。

試験勉強のストレスがなく、純粋に「学ぶ楽しさ」に集中できたのは、社会人経験を経た今だからこそ味わえた贅沢でした。

コースの種類

フォルクフーグスコーラで提供されているコースは約2,000近くあり、3つのカテゴリーに分けられます。

幼児教育〜高等教育までを代替で学べる一般コース、音楽や視覚芸術、その他の活動など特定のグループまたは職業志向などに焦点を当てている特別コース、そして短期コース、夏季コース、委託トレーニングなどが含まれるその他のコースです。

授業は基本的にスウェーデン語で行われ、学校の多くは寄宿施設(寮)を備えています。

コースの種類・特徴
コースの種類 対象となる人 内容・特徴
一般コース 学び直しや進学を目指す人 幼児教育〜高等教育まで。大学進学資格の取得も可能
特別コース 芸術・音楽など特定分野に関心のある人 実技中心、職業志向やグループ活動に焦点
その他コース 短期学習や体験を希望する人 短期/夏季コース、委託トレーニングなど。
特別コースに類似の科目も多い

学校とコース内容は、オープンで自由にアクセスできるデータベースとして一般公開されているので、誰でも学校の情報を検索・閲覧することができます。

ちなみにスウェーデンは英語で概要説明用のページが作られていて、発祥国デンマークは英語用のサイトが別に設けられています。

*PCは右クリックで「日本語へ翻訳」、スマホ・タブレットはGoogle Chromeで自動翻訳すると日本語で読めます。

関連記事はこちら

スウェーデンのフォルクフーグスコーラの公式サイトの見かたは以下の記事で詳しく解説しています:

デンマークのフォルケホイスコーレが気になる方はこちら:

筆者がフォルクフーグスコーラを選んだ理由

実は、筆者は留学を決めるまで、元から北欧やスウェーデンに興味があるわけでも詳しいわけでもありませんでした。

海外留学したいと思い始めてから、希望条件や何を学びたいかを長らくの間考えていましたが、最低条件は「低コスト」「低ストレス」の2つを満たしていることでした。

日本国内、そして世界中の大学や専門学校などを調べる中でたまたまデンマークのフォルケホイスコーレを知り、北欧のほかの国のフォルケホイスコーレについて深堀りした結果行きついたのがスウェーデンのフォルクフーグスコーラでした。

低コスト・低ストレスの留学を求めて・・・

私は20代前半にニュージーランドへ3か月ほどの短期留学の経験があり、帰国後 社会人になりました。それから早10年が過ぎてふと「新しいことを学びたい」「もう一度外国で暮らしたい」という思いが起こり、できるだけ低コスト・低ストレスでの留学をするべく調べ始めたのはパンデミック前後(2020年頃)でした。

ふたたび留学するために調べた結果、自分の理想する留学のカタチに一番近かったのは、スウェーデンのフォルクフーグスコーラでした。バリエーション豊かなコースの数々、ノー試験・ノー成績という仕組み、そして必要なのは生活費(寮費)とわずかなサービス料のみ

面白い学びがたくさんありそうな学校というだけでなく、「学費+生活費」の資金ネックが瞬時に解消されてしまう。一気に留学のハードルが下がった瞬間でした。

実際にかかった留学費用: 約150万円

  • 航空費:27万
  • 海外保険:14万
  • 寮費+サービス料:80万
  • 生活費/娯楽費:30万

私は留学を心に決めて調べていくうちに、スウェーデンの魅力や良さを知っていきましたが、実際に渡航してからも心優しく自由な気質の人々と出会い、素敵な文化や伝統、価値観の詰まった国だということを改めて実感しています。

そしてスウェーデンでの生活を終えた2025年の今、この国で学べてよかったと心から思っています。

あなたはどんな留学を実現したいですか?

本サイトに目を留めて読んでくださっているあなたも、きっと留学や海外生活を今まさに検討していることと思います。留学する上で一番大切なことは、あなたが何をしたいか、どんな風に実現したいかです。

そこがブレなければ、どの国を選んでも、どの学校をどの専攻を選んでも、きっと楽しくて充実した留学生活が待っているでしょう。

そしてスウェーデンのフォルクフーグスコーラは、きっとあなたにその環境を与えてくれる場所になるはずです。

葉のイメージ画像

FHS留学に関するQ&A

Q: 語学力が不安です。授業についていけますか?

A: 大変だけどなんとかなります。

筆者の場合、講師から「過去にスウェーデン語も英語も話せない日本人の生徒がいたこと、講師側でサポートするのであまり心配はいらないこと」を聞けて不安が解消できました。

渡航前にスウェーデン語の基礎(文法、数字、時計の読み方など)を中心に1年半ほど独学しましたが、ほぼ超初心者レベルでの渡航でした。(英語は日常会話レベル程度です)

実際、留学中の大半は翻訳アプリを使いながら会話し勉強しました。講師もクラスメイトもゆっくりスウェーデン語(時々英語)を話してくれましたし、授業外や寮生とは英語でやり取りしていたので不自由なりに楽しむことができました。

Q: 費用はどれくらいかかりますか?

A: 学費は無料なので、必要なのは寮費/週末の食費(月10万円程度)とサービス料(年間約2万円)、それと主に航空券、海外保険等の費用です。

筆者の場合は、10か月の長期コースで約150万円ほどかかりました。詳しくは【第三部】で解説しています。

Q: どんなコースがありますか?

A: 音楽、アート、工芸、環境学、社会学、語学など約2,000近いコースがあります。

大ジャンルで6種類、大ジャンル内に計19の中ジャンルがあります。公式サイトで検索できます。詳しくは【第三部】のこちらで解説しています。