スウェーデンってどんな国?|留学先としての魅力と国民性の実体験レポート

イェーテボリ空港の到着出口で出迎えてくれる「ようこそ」の看板

なぜスウェーデンで学ぶのか?

留学先を選ぶ上で、最も重要なのは「自分が心地よく学べる環境か」ということです。

スウェーデンは、日本のような「周囲に合わせる」「空気を読む」プレッシャーが少なく、自分らしく、ストレスフリーで学べる環境が整っています。

広大な国土に約1,000万人(東京23区程度)という人口密度の低さ、多様性を当たり前に受け入れる国民性、「自分の幸福」を大切にする価値観──。

本記事では、実際にフォルクフーグスコーラへ留学した筆者の体験をもとに、スウェーデンという国の魅力とそこで学ぶことの精神的なメリットを紹介します。

スウェーデンの基本情報

寒冷地帯、広大で人の少ない土地

スウェーデンは北ヨーロッパ(北欧)のスカンジナビア半島に位置する国で、首都はストックホルムです。

国土は日本の約1.2倍(日本全土+北海道一つ分)、人口は約1,000万人(東京23区分)しかいないので、かなり人の密度が低い国です。

高緯度に位置するため、南部を除いて冬は長く寒さも厳しく夏でも全般的に冷涼な気候で、夏は日照時間が長くなる影響で夜でも明るく、冬は逆に昼過ぎに日暮れとなります。

移民が多くオープンな気質

移民受け入れの歴史が長い印象があるスウェーデンでは、外国のルーツを持つ人々は全体の20%を占めています。

近年は移民条件の緩さが犯罪の増加に繋がっていることが問題視され対策を取られつつありますが、スウェーデンの文化は外部に対してとてもオープンな性質を持ちます。

非常に個人主義的な国民性があり、特に男女間における平等という価値観が強く根付く国です。

食文化

主食はジャガイモ、味付けは塩コショウが基本ですが、保存食の文化や多国籍なルーツの食文化も広く受け入れられています。

ニシンの酢漬けや肉・魚の燻製のほか、魚介類ではエビやサーモンのほか、インド料理やアジア料理など世界各国の伝統料理が食べられています。

フィーカというコーヒーブレイクの文化もあり、午前と午後にそれぞれ一回ずつフィーカすることが一般的です。会社ではもちろん家庭でも、日に数度、同僚や友人、家族とともにちょっとしたお菓子や軽食を片手にコーヒーを嗜みます。

スウェーデン人の国民性

実は「ヨーロッパの日本」と喩えられることもあるスウェーデン人は、基本的に控えめで穏やかな国民性で、ヨーロッパの中でも日本人に似た気質を持つと言われています。

私の出会ったスウェーデンの人々の印象は、多様性に寛容、個人主義です。彼らは日本人の気質とたしかに似ていて親切かつ控えめ、空気を読んだり協調性のある方が多いです。

でも多くの日本人と違って、自分という軸やポリシー、好き嫌いなどははっきりと自分の口で伝える、そして他者のそういった主張を当たり前に受け入れる、そんな印象を持ちました。

多様性に寛容、自分の幸福に敏感な国民性

スウェーデンで暮らしてみて特にとても素敵だなと思ったのは、彼らが自分自身の幸福に敏感だということです。

みんな、自分自身がストレスなく幸せに過ごすための工夫をいつも凝らしていました。角が立たないようにしながら自分の意見を主張しますが、相手にそれを押し付けることはしません。

「私はこう考えます、感じます。あなたはそう考え、そう感じるんですね。」というように、周囲の意見をフラットに受け止め、自分や他者に寛容でいる姿勢を肌で感じる日々でした。

他者の存在そのものをありのままに受け止めていることを日常的に感じられて、それがとてもストレスフリーで心地よかったです。

【実体験】スウェーデン南西部で出会った人々

筆者は治安の良い田舎町に住んでいて、生活のほとんどを学校と寮で過ごしました。近隣の町や都市では様々なルーツを持つ人々が暮らし、学校は10代から70代までの老若男女で溢れていました。

ルーツや性別、年齢はもちろん、性格の傾向や障がいなどの特性も含め誰もがそれらを個性として当たり前に尊重していて、まさに多様性そのものを肌で感じられる環境でした。

スウェーデンの人たちは どことなくシャイですが目が合えば挨拶を交わし、バスの待合いでは軽く会話をするような、朗らかでフレンドリーな方が多いです。
私も街中で何度か助けてもらいましたが、人助けを当然と考えて相手に気負わせないような自然な親切心を持つ人が多いと感じました。

スウェーデンと日本の違い

近年の日本は、ステレオタイプの古い価値観が少しずつ自由で多様性のあるものに変容している過渡期と言えます。とはいえ、まだ古い慣習や価値観に振り回されたり、働き詰めだったり。何かとストレスの多い社会で過ごしていると、疲れやストレスは溜まっていくものです。

もしあなたが、日本で以下のように感じているなら、スウェーデン留学(=大きく環境を変え、新しいことに挑戦すること)はあなたにとって人生を変えるきっかけになるかもしれません:

  • 「周囲に合わせる」ことに疲れた
  • 「空気を読む」ことにストレスを感じる
  • 満員電車や人混みが苦手
  • 「頑張りすぎる」自分をやめたい
  • 自分らしく生きたい

スウェーデンはそんなあなたを受け入れてくれる場所です。

日本とスウェーデンの社会の主な違い
項目 日本 スウェーデン
価値観 集団主義(みんなと同じ) 個人主義(自分らしく)
働き方 長時間労働が美徳 定時で帰るのが当たり前
多様性 「普通」からの逸脱が難しい。同調圧力、マイノリティへの偏見がまだ残る(+不十分な法整備)。 「みんなちがって当たり前」。LGBTQ+を含むマイノリティを受容する社会(各種、法整備あり)。
自己主張 「空気を読む(周りに合わせる)」ことが求められる 「自分の意見を持つ・主張する」ことが求められる
人口密度 高い(満員電車、人混み) 低い(適度な距離感)

スウェーデンの現実(リアル)

筆者がスウェーデンへ渡航し、見聞き、体験したことも踏まえて、良いところばかりではないスウェーデンの側面をまとめてみました。

1. 冬が長く、暗い

11月~3月は日照時間が極端に短く(南部でも1日6時間程度)、冬季うつ(SAD)になる人もいます。ただし、ビタミンDサプリと適度な運動で対策できます。

2. 生活費が高い

服飾や生活用品、一部食品などの生活費は日本よりやや高めに感じました。ちなみに外食は、フードコートのランチ(ドリンク+単品)で約2,000円~、レストラン(チップ制)でランチ(ドリンク+単品)で5,000円~くらいです。

FHS留学では学費無料なので、寮生活+週末の自炊を心がければ月10万円程度で生活できます。

3. 言語のハードル

英語は通じますが、深い人間関係を築くにはスウェーデン語の学習が必要です。ゲルマン系の言語で文法が英語と似ているのと、英語由来の外来語も多くあるので習得のハードルは決して高くありません。

4. 一部の都市郊外の治安悪化

ストックホルムをはじめ、大型都市の郊外などの一部は移民系の人々によるスラム街があり、近年、若年層を巻き込むギャングの犯罪が問題視されています。

必要以上に怖がることはありませんが、観光地でも軽犯罪のスリがあるようなので、旅行や観光の際は、危険エリアへ立ち入らないよう注意が必要です。

それを補って余りある魅力のあるスウェーデン

日本と比較すると、冬は暗く寒いですし円安の影響で物価も高いです。交通機関の利便性・正確性、配達サービスなどのクオリティは日本にはかなわない、とも感じます。

それでも、それを補って余りある精神的な豊かさをスウェーデンで手に入れることができると感じています。

日本で疲弊した心を癒して羽を伸ばし、低コストで自分らしく学びながら、新しい自分をのんびり見つける――こういった経験は、物質的な豊かさや金銭には代えられません。

実際に留学を終えた今、1年弱のスウェーデン生活もとい”大人になってからの留学体験”は、人生で最も自分らしく過ごせた時間だったと確信しています。

スウェーデンで学ぶ、5つの精神的なメリット

1. 人口密度が低い=伸び伸びできる

スウェーデンの国土は日本の約1.2倍ですが、人口はわずか1,000万人(東京23区程度)。人口密度は日本の約8分の1です。

これが何を意味するか?満員電車も、人混みも、行列もないということです。

実際に私も、留学中に「人が多すぎて疲れる」と感じたことは一度もありませんでした。街を歩いていても、森を散歩していても、常に適度な距離感があり、心が落ち着きます。

日本で「人の多さ」にストレスを感じていた私にとって、これは想像以上に大きな癒しでした。

2. 多様性に寛容=自分らしくいられる

スウェーデンは移民受け入れの歴史が長く、外国人への差別が少ない国です。LGBTQ+への理解も深く、誰もが自分らしく過ごせます。

実際に留学中、私は「外国人だから」という理由で不当な扱いを受けたことは一度もありませんでした。むしろ、「あなたはあなたのままでいい」という空気が常に流れていました。

集団行動を取る以上は、最低限の協調性や周囲との親和性というものは求められます。ですが日本のように「右向け右」のような強制力はなく、「嫌なことは嫌」と主張できる土壌が培われています。

日本の「周囲に合わせすぎる」ことや「周囲と少し違う行動を取ると角が立ちにくい」ことにやや辟易していた私にとって、この「ありのままを受け入れる」文化は心の重荷を下ろすきっかけになりました。

3. 個人主義=プレッシャーが少ない

スウェーデンは非常に個人主義的な国です。「みんなと同じ」を求められることがなく、自分の意見をはっきり言うことが当たり前です。

実際に学校でも、「こうすべき」「これが正解」という押し付けは一切ありませんでした。「あなたはどう思う?」と常に問われる環境で、自分の頭で考え、自分の言葉で話すことが自然と求められました。

同調圧力もなく、自分の「こうしたい」「こうありたい」が優先される環境。完全な自由の中で自我を表現するという学習環境は、大きな解放感であり新しい作業でした。

4. 「自分の幸福」を大切にする文化

スウェーデン人は、自分自身の幸福に敏感です。

「無理をしない」「自分を大切にする」ことが当たり前の価値観として根付いています。仕事よりもプライベートを優先することに、誰も後ろめたさを感じません。

実際に留学中、校外学習で終日イェーテボリで過ごした日や体を使う作業が多かった日の翌日、クラスメイトの半数が「昨日は身体を動かして疲れたから、今日は家でゆっくり過ごす」と欠席の連絡をする場面に何度も遭遇しました。そして、誰もがそれを当然と受け入れていました。

また、「喉が少し痛む」という症状で風になる前に学校を休む人が多いのも驚きでした。これが生徒だけでなく講師も同じでした。

日本で「周りに迷惑をかけないこと」「我慢すること」が美徳とされる中で育った私にとって、「自分を大切にすること」が当たり前の文化は、目から鱗が落ちる体験でした。

5. ワークライフバランス=無理をしない

スウェーデンは世界有数のワークライフバランス先進国です。残業はほとんどなく、夕方17時には帰宅するのが普通。週末は家族や友人と過ごす時間を大切にします。

学校でも同じで、「無理をしない」文化が根付いています。課題が多すぎると感じたら、先生やクラス会の議題に挙げて相談し合うことができますし、体調が悪ければ遠慮なく休めます。 「頑張りすぎない」ことが長期的なパフォーマンスを上げるという考え方が、社会全体に浸透していました。

学生だった時も社会になってからも働きすぎて疲弊しがちな私にとって、この「無理をしない」文化は、まさにカルチャーショックと言える衝撃でした。

FHS留学で感じたカルチャーショック TOP3

  • 第1位:「決めごと」の強制力が弱く、柔軟
  • 学校の授業で指定される課題には完成発表日がありましたが、期日に間に合わせるために「頑張りすぎない」という前提があり、強制力はありませんでした。
    課題が乱立し、作業量を少しでも負担に感じれば、教師へ相談してすぐに楽になるよう調整が入る環境でした。

    また、家庭や体調などの事情で課題の進捗が遅れても急かされることはなく、授業の遅れは講師が1対1で対応していたことに驚きました。

  • 第2位:自分の幸福に敏感=他人にやさしい
  • 「自分の幸せを知っている人は、他人の幸せを願える人」、そう感じる機会が多いほど親切で思いやりのある人たちばかりでした。

    「個人主義」「自分の幸福を重視する」という特性は、決して「自己中心的」「わがまま」ということではありません。

    自分の両手に拾える範疇で他人を思いやりつつも、自分を優先することは忘れず、自他の境界をきちんと引いていることが印象的でした。

  • 第3位:ありのままを受け入れる
  • 学校には人種や年齢だけでなく、何らかの障がいのある人たちも含めて様々な特性や個性のある生徒たちが通っていました。

    教師も生徒もそこで働くスタッフも、専攻コース、ルーツや年齢、性別、個性に関わらず、みなフラットにフレンドリーに関わっていました。

    ここまで多様な人たちと一堂に会する状況や環境に置かれることがなかったので、私にはとても新鮮でした。

FHS留学の魅力

英語でコミュニケーションできる国

スウェーデンの公用語はスウェーデン語ですが、人口が1000万人程と少なくスウェーデン語の教材や文献が限られています。そのため、10代から英語教育をされていて基本的に国民のほとんどが英語が堪能です。

スウェーデンは世界的に見ても教育水準の高さで知られていて、学生向けの支援制度も充実し、大学では英語の授業が多く、留学生にも学びやすい環境が整っています。(2020年までは留学生も学費無料で学ぶことができました。現在は廃止された制度なのが残念です…)

スウェーデン語初心者であっても日常生活を英語のコミュニケーションで過ごせることは、スウェーデン留学のハードルがかなり下がるポイントとなるでしょう。

FHSの授業はスウェーデン語

一つ注意したい点は、フォルクフーグスコーラ(FHS)の国籍問わず学費無料、成人の誰もが参加できる学校ですが、授業は基本的にスウェーデン語で行われるということです。です。

最低限の語学力(日常会話レベルのスウェーデン語に加え、英会話スキルがあるとより安心)が必要なことは留意しておきましょう。(どうしても分からない時は、もちろん英語も使えます)

フォルクフーグスコーラ留学は、語学留学と違い 専攻コースのバリエーションや学習スタイルが豊富で、フルタイムやオンライン授業、シーズン限定の短期コースなど様々な形態で学びの場を提供してくれています。
座学だけに留まらず、自身の趣味・嗜好や生活スタイルに寄り添う形で、知的好奇心を満たすコースを見つけることができます。

こうしたスウェーデンの自由で寛容な国民性や気質、フォルクフーグスコーラという学校の自由度の高さを踏まえても、英語圏の国々同様に、スウェーデンは留学先として有力な選択肢の一つとなっています。

スウェーデンのFHS留学が向いている人

  • 自分らしく学びたい人
  • 多様性を尊重する環境で過ごしたい人
  • 新しいことに挑戦したいけど、高いハードルは避けたい人
  • 学ぶことが好きな人
  • 環境の変化やイレギュラーを楽しめる人
  • 「頑張りすぎる」自分をやめたい人

スウェーデンのFHS留学が向いていない人

  • 常夏の気候が好きな人
  • 英語での授業を求めている人
  • スウェーデン語や英語の学習を苦痛に感じる人
  • 環境の変化をストレスに感じ、ずっとなじめない人
  • 独りで判断したり行動することができない人
  • 柔軟な思考が苦手な人

スウェーデンで新しい自分を見つけよう

スウェーデンは、現代日本の喧騒から離れ、新しい自分を見つける充電期間にぴったりな場所です。

人口密度が低く、多様性に寛容で、「自分らしく生きる」ことが当たり前。フォルクフーグスコーラという学費無料の学校で、試験や成績に縛られず、純粋に学ぶ楽しさを味わう。

そんな経験は、あなたの人生を大きく変える一助になるかもしれません。

次の記事では、日本人にとってのFHS留学の魅力をさらに詳しく解説します。

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